2018年度卒業式を挙行しました

2018年度沖縄キリスト教短期大学、沖縄キリスト教学院大学の卒業式を3月15日(金)に挙行しました。

 
証書の授与                 告辞を述べる学長

<告辞>

沖縄キリスト教学院大学 沖縄キリスト教短期大学
学長 友利 廣

沖縄の春を彩るイッペーの樹に色鮮やかな黄金色の花が咲き始める季節に、ご来賓の皆様、保護者の皆様、同窓会・後援会の皆様をお迎えして、2018年度沖縄キリスト教短期大学、沖縄キリスト教学院大学の卒業式・学位記授与式を挙行できますことは、大きな慶びとするところであります。

本日、卒業式に臨む沖縄キリスト教短期大学英語科、並びに保育科の卒業生の皆さん、沖縄キリスト教学院大学英語コミュニケーション学科の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。本学院の教職員、在学生、並びに関係者の皆様を代表して、皆さんの新たな門出を心より祝福します。また、今日のこの日迄、ご子息、ご息女を温かく見守り、支えてこられました、ご家族・保護者の皆様に心からお祝いを申し上げます。

沖縄キリスト教学院の学び舎を卒業する皆さんは281名となります。学院創立から61年の歴史を刻む本学院ですが、この間に社会に送り出した卒業生は総勢14,847名を数えます。皆さんの先輩達は国内外の各界各層にあって、社会の発展を支える礎として活躍していますことをご報告致します。是非とも先輩達の後に続き、揺れ動く社会をしっかりと導く人材として活躍することを祈念しております。

さて、本日卒業する皆さんへ激励の気持ちを込めてメッセージを贈りたいと思います。

まず、沖縄キリスト教学院が沖縄社会において果たしてきた役割と将来を見据えた使命について触れます。本学院初代学長を務めた仲里朝章牧師は開学の辞として、「曾て太平洋の孤児と呼ばれた沖縄が 今日国際的平和の島として政治経済分野あらゆる面で一大変化をなしつつあるのは 実に不思議な節理であります。しかし 複雑にして矛盾の多い現在の沖縄を国際的平和の島にするには 是非ともキリスト教文化が基礎をなさねばならぬことは 世界史の教ふる真理であります。そこでわれらは 新しい沖縄の建設に直面して キリスト教の精神を身につけた人材の養成が緊要であることを確認してこの学校の設立をしました。」と言う言葉を記しました。

戦後の沖縄の混沌とした時期に発せられたこのメッセージの文脈には、沖縄を取り巻く時代状況が的確に反映されて、また、国際社会で広く受容されているキリスト教文化を沖縄の人材養成の基層文化とすべきとした、沖縄が歩むべき道標が示されています。多文化共生につながるこの精神の継承は、海外提携校との海外研修プログラムを通して実践されており、卒業生の皆さんはこの学びの経験を社会の舞台で活かして頂きたいと思っています。

次に、学院創立60周年記念事業の連続寄附講座「沖縄の平和の道標とアジア共同体」について触れたいと思います。同講座は『紛争や差別のない共通の価値観の下で平和共存を標榜するアジア共同体創生に向けて、沖縄として何ができるか。或いは、アジア共同体創生と本学院が掲げる建学の精神「国際的平和の島」を繋ぐ連結軸に万国津梁の精神を如何に注入するか』を問いかけるもので、ワンアジア財団の助成を得て昨年度後期科目として開講したものです。

特筆すべきは、講師陣に世界の賢人であり、また平和学の泰斗ヨハン・ガルトゥング博士が名を連ねていたことです。博士にはスペインと専用回線でつなぎライブ対談にご協力を頂きました。ご承知のように、ガルトゥング博士は“積極的平和主義”の唱道者であり、3年前に沖縄を訪れ、世界に向けて沖縄支援の力強いメッセージを発信された方です。平和の実現のために東西奔走するガルトゥング博士と身近に語らうという得難い機会に恵まれたことを、卒業生の皆さんは自らの糧にして頂きたいと思います。

今一つ触れておきたいことがあります。沖縄からみた東アジア情勢のダイナミズムに向き合う心構えについてであります。国際情勢のダイナミズムを目の当たりにする機会はめったにあるものではありません。今将にその真只中にあります。戦後、奇跡の経済発展を成し遂げた日本経済に取って代って、急速に勢いを増す中国経済が周辺国を始め欧米諸国を巻き込み、その漲る力をもって、閉塞感漂う世界経済を力強く牽引しています。

万国津梁の精神を隣国関係の国是とした嘗ての琉球王府の大交易時代が、アジアのダイナミズムの追い風を受け、再来の観を呈しています。皆さんに期待したいことは、そのような時代状況の中で、海外研修で培った多文化共生の精神を発揮して存分に活躍してもらいたいと切望していますが、この精神の発露には、まずは、前に踏み出す勇気が肝要です。決断の時の逡巡は誰しも経験するものです。

ここで前に踏み出す勇気を語った20世紀を代表する詩人のひとり、W・H・Auden(ウィスタン・ヒュー・オーデン)の詩「見る前に跳べ」の一節を紹介します。

危機に備える感覚を常に研ぎ澄ましなさい。

ここから眺めれば穏やかに見えたにしても、

実際は険しい道程かも知れない。

だから好きなだけ見続けてもいい。

しかし、何れは飛ばなければならない。

 最後に、旧約聖書の箴言第2章10~11節の聖句を贈ります。

「知恵があなたの心を訪れ、知識が魂の喜びとなり、慎重さがあなたを保ち、英知が守ってくれる(新共同訳版)」。このみ言葉は、皆さんがどのような岐路に立っても心の道標となり、導いて下さることを確信しています。卒業生の皆さん、本日は誠におめでとうございます。

2019年3月15日

卒業式の様子