【学長メッセージ】新入生のみなさまへ

【掲載日】2020-04-07

新入生のみなさまへ
金 永秀
沖縄キリスト教学院大学
沖縄キリスト教短期大学
学長 金 永秀

 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。入学式式典が新型コロナウイルス感染防止の為に中止となり、大変残念で申し訳なく思っております。さぞかし、動揺した人も多かったことと想います。コロナウイルスについては、当初の楽観的な見方を覆して、世界は生命・健康のみならず国家関係や人間関係そして経済においても大きな打撃を受けています。多くの国々がパニックに陥り、現代社会の脆弱性を露呈している状況を見るにつけ、輝かしく見えたグローバリズムの影や、現代医療と科学の限界性についても考えさせられます。
 このような悲惨な状況は、歴史上何度も繰り返されてきました。14世紀以来、ペスト大流行の時代には犠牲者が約5000万人、当時の全世界の人口の四分の一の生命が失われたといわれています。今日の私達よりも、はるかに大きな恐怖が数世紀にわたって社会を覆いました。しかし、このような時代は、又、改革と革新の時代でもありました。16世紀に展開された「宗教改革」も、やはりペストの猛威に晒されていた時代の出来事です。この社会的・思想的変革は、単なるキリスト教内部での出来事にとどまらず、ヨーロッパを中世から近世・近代へと導く大きな思想的転換点となりました。17世紀には、かのアイザック・ニュートンがペストの脅威を逃れてロンドンの大学から故郷に帰り、「万有引力の法則」が発見されることになり、科学の歴史の新しいページが開かれることになったことはつとに有名です。
 このニュートンが、科学者であると共に、キリスト教神学者でもあった事は余り知られていません。彼にとって、神学と科学は矛盾なく真理探求の具でもありました。本来、信仰・思想と科学は互いに矛盾するものではありません。絶望と暗黒の状況であっても、人類は真実を探究し、新しい時代を創造してきたのです。
 沖縄キリスト教学院もまた、暗闇と苦難を経験した人々によって創設された大学です。新しい時代の光を見出した創設者達による祈りと努力、そして沖縄内外と国際的な協力者達の力の結集によって誕生いたしました。それまでの軍国主義・超国家主義的教育は、沖縄人口の四分の一以上を死に追いやり、島全体を荒廃させる戦争に至らせたのです。このような教育を深く反省した本学院の創設者達は、沖縄の平和を支える人材を輩出する教育ヘの使命に突き動かされました。
 新型コロナウイルスの影響が、今後どれ程のものになるのかは誰にもわかりませんが、相当に深刻なものになることは容易に想像できます。このような時代だからこそ、危機を乗り越える叡智が生み出される時でもあります。新入生の皆さんは、この危機に挫けることなく、学びに全力をつくして下さい。そして、新しい時代を拓いて欲しいと思います。

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