2017年度卒業式を挙行しました

2017年度沖縄キリスト教短期大学、沖縄キリスト教学院大学、沖縄キリスト教学院大学大学院の卒業式および大学院修了式を3月15日(木)に挙行しました。

180322_sotsu02180322 gakutyou
証書の授与                   告辞を述べる学長

<告辞>

沖縄キリスト教学院大学 沖縄キリスト教短期大学
学長 友利 廣

心地よい季節に包まれて本日ここに来賓の皆様を初めご父兄ご家族並びに関係者の皆様のご臨席を賜り2017年度の卒業式・修了式を挙行できますことは慶びに堪えないところであります。教職員を代表しまして感謝の意を表したいと思います。また学院創立60周年という記念すべき年に本学を卒業・修了する皆さんへ心よりお祝いを申し上げたいと思います。誠におめでとうございます。
記念すべき年の学位授与者は沖縄キリスト教短期大学英語科78名、保育科101名、沖縄キリスト教学院大学英語コミュニケーション学科75名、大学院異文化コミュニケーション研究科2名の総勢256名になります。大学を巣立つ皆さんには今日のこの日まで皆さんを暖かく見守り励ましてこられたご家族を初め教職員学友への感謝の気持ちを忘れないで頂きたいと切に願っています。
さて皆さんの新たな旅立ちに際していくつかのメッセージを贈りたいと思います。
現下の社会経済情勢は“経高・政低”の観を呈しています。政治と経済は相互依存関係にありますが、経済の力強さに比べ政治の方は分が悪く「人身の和は政治の要諦」とかけ離れた状態にあります。それ故、皆さんの専らの関心事である“経高”の方からはなしを始めます。
世界に目を向けますと目覚ましい経済発展を続ける中国の登場があり、国際経済の潮流を欧米主導からアジア主導へとシフトさせています。
この流れは東アジアの広大な海域に連なる島嶼県沖縄へも押し寄せており、長い雌伏の期を経て、これまで仕掛けてきた制度が漸く花開き、経済を持続的な発展軌道へ押し上げ巡航軌道に乗せる“追い風”として吹き始めています。
以上の環境変化は、留学や海外研修などの異文化体験を通して皆さんが培った経験知を活かす環境が整いつつあることを意味しています。前に踏み出す勇気をもって、それぞれの現場で皆さんの力を存分に発揮し活躍することを願っています。
一方で、沖縄社会が直面する喫緊の課題に幼少期の教育の在り方があります。18年前にノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学のジェームズ・J・ヘックマン教授は長年に亘りマイノリティーの経済的貧困問題に関して追跡調査を行ってきた方です。
その研究によりますと 幼少期の教育がその人に備わる忍耐力、協調性、計画力といった「非認知能力」を高めているとしています。改めて保育教育を担う皆さんには幼少期の教育がこども達の社会性形成につながる重要なものであることを絶えず意識して職務に励んで頂きたいと思います。
次に明治の草創期の教育者として、また啓蒙思想家として近代国家の指南役を果たし多くの知識人に影響を与えた福沢諭吉のことばを紹介し市民社会の一員としての私達の社会的ミッションについて共に考えてみたいと思います。
彼は自ら主宰する不定期刊行誌の「民間雑誌」に「人の説を咎む可からざるの論」を執筆しています。その中の一節に“雁”の習性を通して指導者像に触れた箇所があります。古典調の文章ですが読み上げてみます。
「群(ぐん)雁(がん)野に在て餌を啄むとき 其内に必ず一羽は首を揚げて四方の様子を窺い 不意の難に番をする者あり 之を奴雁と云う。学者も亦其の如し。天下の人 夢中になりて 時勢と共に変遷する其中に 独り前後を顧み 今世の有様に注意して以て後日の得失を論ずるものなり」。
含蓄に富む諭吉のこの一節は中国元朝末期から明朝初期を代表する思想家にして儒学者宋濂(そうれん)の言葉を引用したものですが、文明開化の真只中、近代国家を標榜し欧米列強に伍す国造りを託す指導者の資質を論じたものです。
要は「指導者は国の奴雁なり」とし市井の中において人々を在るべき方向に導く使命が指導者の使命であるとしています。一方で諭吉は“一身独立して一国独立する”と語り、個の独立の重要を説いていることも忘れてはならないと思います。
人々の価値観が多様化しポピュリズムが大手を振る中で皆さんには「奴雁の志」即ち、本学院の卒業生、修了生として他人を思い遣り、平和を尊ぶ心に軸足を置き、社会の導き手になることを強く期待しております。
最後に旧約聖書箴言第2章10~11節のみ言葉を贈ります。
「知恵があなたの心を訪れ 知識が魂の喜びとなり 慎重さがあなたを保ち 英知が守ってくれる」
皆さんの新たな旅立ちを祝し学長告辞と致します。
2018年3月15日

卒業式の様子

180322_sotsu01180322_sotsu06 180322_sotsu05 180322_sotsu04