2023年度 卒業式を挙行しました

【掲載日】2024-03-25

2023年度沖縄キリスト教短期大学、沖縄キリスト教学院大学の卒業式を3月15日(金)に挙行しました。

【告辞】

 卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。また、卒業に至るまで物心両面で支えてこられましたご家族、ご親族をはじめとした皆様方に心よりお祝いを申し上げます。

 今年の卒業生の皆さんの学生時代はコロナとの闘いで幕を開けました。大学と共に苦労して頑張ってこられたことを感謝したいと思います。本日の卒業式はそのコロナが落ち着いて来たということで、コロナ前のキリスト教学院の伝統的な形で行うことができて感謝です。

 

 この式典の最初に聖書の「マタイによる福音書13章」一節が読まれました。この聖書の言葉は、私たちの学院が伝統的に卒業式において読んできた聖書の箇所です。「種を蒔く人」すなわちお百姓さんが種を蒔いた。畑に落ちないで道端に落ちた種、石だらけの土地に落ちた種、茨の木が茂っている土地に落ちた種、そし        て、よく土が耕された畑の土地に落ちたもの、この良い畑に落ちた種は百倍にも六十倍にも増えていったというものです。

 「種を蒔く人」とは天地万物を造り、私たちの人生を導く神のことを表しています。そして、蒔かれた種とは私たち人間であるという聖書の世界・人間観が語られております。この聖書の教えをより深く考えるならば、私たちの人生は世界を作った創造者(神)によって種撒かれて使命を与えられたということを意味するのです。

 そのような意味で、キリスト教は単に(神)礼拝のみを強調するわけではありません。酒を飲むな、タバコを吸うなという戒律を強制する教えでもありません。神によって造られた私たちは、それぞれの人生においてなすべき使命を与えられているということ。また、私たちは、使命を与えられるだけの価値ある存在であることを覚えるということです。やがて、種は芽を出し、成長して豊かな実りをもたらすからです。

 加えて卒業生の皆さんにお伝えしたいことは、私たちの存在価値は、私たち個人にとどまるものではないということです。私たちの価値を引き出し、私たちの価値を発揮させてくれるのは、神であると共に、皆さんの隣人です。そして、私たちもまた、私たちの隣人の価値を高める存在であると言うことです。

 アメリカの社会学者・歴史学者として名高い、イマニュエル・ウオーラースティンという人をご存知でしょうか。彼は、それまで国とか地域とかで区分して狭い視野で社会や経済や歴史というものを見る、そういう常識を超えた考えを改めた人です。世界が繋がっており、その世界的規模に広がるシステムから、世界を、政治を、経済を見るという理論「世界システム論」を提唱しました。

 1950年代、ウオーラースティンは、アフリカ研究者として出発しました。今以上に、当時のアフリカは貧困に喘ぎ、政治的にはヨーロッパの国々から独立はしても実質的には分断され、世界から差別され、搾取される矛盾を抱えていました。欧米の国々からは全く別世界と考えられていた。やがて、この状況を打開するため、アフリカの指導者達はアフリカを統一してそのような矛盾をなくそうという運動が起こりました。ウオーラースティンは、そのような状況の中でこのようなことを言う。

 「われわれは、アフリカ統一運動の発生を世界システムの観点から分析しなければならない。なぜなら、この運動に対して、その行動の自由を与奪しうるのは、世界システムの状況変化にほかならないからである」

 欧米にとってアフリカは別物で、関係する価値もないという考えを根本から変革する思想を提唱したのです。もちろん、私は彼の思想をそのまま肯定する形で現在の世界の覇権体制をよしとするものではありません。ただ、ウオーラスティンが見たアフリカへの視点は、沖縄と世界の覇権体制との関係に共通するものを持っていると思います。

 本日学舎を卒業する皆さんは、今から出ていく世界・社会の前で小さな存在でしかないのかもしれません。しかし、皆さんの存在は、巨大な世界・社会と間違いなく結ばれている。否、それ以上に関係のないと思っていたアジア・アフリカ、ウクライナ、パレスチナ(ガザ)の人達と繋がっていることを意識し、その関係を構築しなければならない。そのような人々と共に生きる中で、皆さんはその人々と関係し助け、また反対にそのような人々から力を受け、力を与えられる関係を築くならば、聖書に書かれている、撒かれた種が百倍、六十倍、三十倍にも成長するように成長すると思います。

 

世界と隣人と繋がり、大きく成長するこれからの人生でありますようにお祈りいたします。

ご卒業、おめでとうございます。

チバリヨー。 ワイド。

2024年3月15日

学長 金 永秀